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食道がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.13
食道がんとは
食道は食べ物を胃に送る30~40cmほどの細長い管状の臓器です。食道の粘膜の表面から発生するがんを食道がんといいます。約半数が食道の真ん中付近から発生しますが、喉の近くや胃の近くなど食道のどこからでもできゆ可能性があります。また、同時にいくつもの癌がみつかる事があります。
食道の壁の表面に留まるがんを早期がん、もしくは表在癌と呼びます。食道の粘膜の表面から発生したがんさ大きくなると食道の壁の深くまで入り込んでいきます。食道の壁の深くには血管やリンパ菅が走っており、がんがここまで到達するとがん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って肺・肝臓などの他の臓器や周囲のリンパ節に飛んでいきます。これを転移といいます。また、がんが大きくなり食道の壁を越えると気管や大動脈など周囲の臓器に広がっていきます。これを浸潤といいます。
食道がんは男性に多い病気ではありますが、女性でも緩やかな増加傾向にあります。食道がんは癌化した細胞の組織型により扁平上皮癌と腺癌の2種類に分けられます。日本では扁平上皮癌が多く、欧米では腺癌が多い傾向にありましたが、最近では日本でも腺癌が増えてきています。
食道がんの原因
日本の食道がんの大半を占める扁平上皮癌はお酒とタバコが主な発生要因であり、これらの習慣がある方はがんの発生率が高まることが知られています。
近年日本でも増加傾向にある腺癌は、逆流性食道炎などで胃酸に食道が持続的に暴露されることで発生します。胃酸により食道に持続的に炎症がおこると、バレット食道という病気になりますが、重度のバレット食道が食道腺癌の発生母地となることが知られています。
お酒を飲んだら顔が赤くなる人は要注意?!
お酒に含まれるアルコールは肝臓でまずアセトアルデヒドに分解され、その後酢酸に分解されます。分解の過程で産生されるアセトアルデヒドが悪酔いや頭痛、ひいては発がんの原因になります。
肝臓では複数の酵素がアルコールを分解する役割を担いますが、アセトアルデヒドの分解に重要な役割を果たす酵素が2型アルデヒド脱水素の酵素(ALDH2)と呼ばれる酵素です。ALDH2の働きが弱いと、毒物であるアセトアルデヒドの分解が遅くなります。ALDH2の働きの強さは遺伝により決まっており、日本人の半数程度は働きの弱い遺伝子型を持っています。ALDH2の働きが弱い方はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなります。
ALDH2こ働きが弱い方が習慣的に飲酒を行うと、分解しきれなくなったアセトアルデヒドが体に溜まっていきます。溜まったアセトアルデヒドは気化して唾液に溶け込み、のどや食道の細胞にDNA障害を起こす事で咽頭がんや食道がんの原因になると考えられています。
食道がんの症状
食道がんは早期のうちは自覚症状が出ません。がんが大きくなってくると、食べ物がつっかえる感じがする・胸や背中が痛む・声がかすれる・体重減少などの症状が出ることがあります。このような症状がある方は一度ご相談ください。
食道がんの検査
がんは早期発見・早期治療が重要です。内視鏡検査(胃カメラ)はバリウムやCTでは映らないような小さな早期のがんでもみつけることができます。また、内視鏡(胃カメラ)からNBI(狭帯域光観察)という特殊な光を照射することで、通常の観察ではわからないようなわずかな異常も探知することができます。
食道がんの治療
食道がんの治療は進行度によって大きくことなります。
がんがある程度進行していれば、病気や体の状態に応じて手術・抗がん剤・放射線治療を組み合わせて行っていきます。
食道の粘膜の表面にがんが限局している早期がんの時期にがんを発見することができれば内視鏡治療が可能です。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という治療法で、内視鏡(胃カメラ)の先端から小さな電気メスを出し、食道の癌化している領域をミリ単位で剥離していきます。粘膜の表面のみにとどまっている早期のがんではこの方法でお腹を切らずに完治させることができ、入院日数も数日間です。
当院では宝塚市立病院・関西労災病院・兵庫医大・阪大病院などと連携しておりますので、治療が必要な病気がみつかった場合は速やかに高度医療機関にご紹介致します。
食道がんの予防
食道がんを予防するためには禁煙し、飲酒もほどほどに控えることが重要です。特に顔がすぐに赤くなる方は要注意です。最近は低アルコール飲料やノンアルコール飲料のラインナップも充実していますので、飲酒の習慣がある方はこれらを上手に取り入れてみてもよいかもしれません。
また、野菜や果物を積極的に食べることで食道がんができにくくなるという報告もあります。
食道がんは早期に発見できれば内視鏡治療でお腹を切らずに完治させることができる病気です。一方で発見が遅くなれば手術ができず命に関わることもあります。飲酒・喫煙の習慣がある方、胸焼けなどの症状が続く方、その他心配なことがある方は定期的に内視鏡検査(胃カメラ)を受けられることをお勧め致します。
開院いたしました。
カテゴリー:内科全般| 2024.05.10
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