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大腸ポリープ
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.24
大腸ポリープとは
ポリープというのは粘膜から突出する小さな隆起性の病変の総称です。大腸にできるポリープには腺腫、過形成性ポリープ、若年性ポリープなど様々な種類があります。
腺腫や一部の過形成性のポリープは大きくなると悪性化する可能性があり、大腸がんの原因となります。
大腸ポリープの原因
大腸ポリープは高脂肪・低繊維質のな食生活に偏っている方や、飲酒や喫煙の習慣がある方にできやすい傾向にあります。いわゆる「食生活の欧米化」により大腸ポリープや大腸がんが増加していると考えられています。また遺伝的な要因でポリープができやすい体質の方もおられます。
大腸ポリープの症状
大腸ポリープは小さなうちは症状が出ないことが一般的です。ポリープが大きくなってくると便に血が混じる(血便)ことがあります。
大腸ポリープの検査
内視鏡検査(大腸カメラ)で大腸の中を詳しく調べることにより、ポリープを見つける事ができます。大腸内視鏡(大腸カメラ)は肛門から内視鏡を挿入して大腸の内部を直接観察します。NBI(Narrow Band Imaging: 狭帯光観察)という特殊な光を用いたり、インジゴカルミンという青い色素を散布することでポリープ表面粘膜の性状や血管の構造を詳細に観察し、腺腫・がん・その他のポリープの区別をつけていきます。
大腸ポリープの治療
内視鏡検査(大腸カメラ)でポリープが見つかれば、小さなものであればその場で切除する事もできます。
ポリープの切除の方法は大きくわけて3個あります。
- コールドポリペクトミー
ポリープの根本にスネアと呼ばれる金属のリングを引っ掛けて切り取る方法です。
- EMR(内視鏡的粘膜切除術)
ポリープの下の粘膜下組織に水を注入してポリープを持ち上げた後、スネアに通電して焼き切る方法です。
- ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
ポリープの下の粘膜下組織に水や薬液を注入してポリープを持ち上げたあと、内視鏡の先端から出した小さな電気メスで少しずつ剥離していく方法です。
当院ではコールドポリペクトミーを行っております。10年ほど前までは、ほとんどのポリープに対してEMRが行われてきましたが、通電を行わない方が出血・穿孔などの合併症が少ないというデータが出ており、近年は小さなポリープに対してはコールドポリペクトミーが主流となっています。
ただし、1cmを越えるような大きなポリープや、癌が疑われるようなポリープではコールドポリペクトミーでは病変が取りきれなかったり、太い血管から出血を起こす可能性があるためEMRを行う事が推奨されています。スネアに入りきらないような大きなポリープはESDを行いフリーハンドで切除していく必要があります。
切除したポリープは病理検査に出し、がんが混じっていないかなどを確認します。確実に診断を行うために、ポリープを一括で切除することが非常に重要です。内視鏡医はポリープの大きさや部位に応じて、確実に一括で取り切れる治療法を選択していきます。
大きなポリープがある場合や数が多い場合など、安全に切除するためにそ入院設備のある病院で切除した方がよい場合は提携病院(宝塚市立病院・関西労災病院・宝塚病院など)をご紹介させて頂きます。
ポリープ治療の合併症
内視鏡治療の合併症としては出血や穿孔(腸に穴があくこと)などが起こりえます。当院で行なっているコールドポリペクトミーは、2017年に報告されたsystematic reviewで800例以上の治療に対して治療後出血・遅発性穿孔はともに0例だったとの解析が出ており、比較的安全に治療を行うことができると考えられています。
ポリープ治療の費用
ポリープ切除は「手術」扱いになります。ポリープの個数にもよりますが、1割負担の方で1万円、3割負担の方で3万円ほどの費用になります。
民間の医療保険に加入されている方は手術給付金がおりることがあります。詳細はご加入の保険会社にお問い合わせください。
大腸がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.20
大腸がんとは
大腸は1.5〜2mほどの管状の臓器で主に水分の吸収を行っています。盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸にわかれ、盲腸と上行結腸の間にあるバウヒン弁という弁で小腸と、直腸から肛門へと繋がっています。
大腸にできるがんを大腸がんと言い、2019年のデータでは男女ともに2番目に多いがんでした。
大腸がんは早期に発見し、早期に治療すれば完治が期待できる病気です。また、原因となるポリープを小さいうちに切除すれば大腸がんの発症を予防することができます。
一方で、大腸がんは粘膜の表面から発生しますが発見が遅れると次第に粘膜の奥深くまで広がっていき、やがて大腸の壁の外まで広がっていきます。大腸の壁との深くに流れるリンパ管や血管にがん細胞が到達すると、リンパ液や血液の流れにのってリンパ節転移や肝臓や肺などの臓器に遠隔転移をおこしてしまうこともあります。
大腸がんの原因
大腸ポリープ(大腸腺腫)が癌化して大腸がんになると考えられており、これをAdenoma-Carcinoma sequenceと呼びます。
大腸がんの30%は遺伝的素因があると言われており、大腸ポリープ・大腸ながんになりやすい体質の方がおられます。近親に大腸ポリープ・大腸がんになられた方がおられる場合は注意が必要です。
また、生活習慣や食生活などの環境的な要因も大腸がんの発症と関与していると言われています。喫煙・飲酒・肥満や加工肉・赤肉の過剰な摂取により大腸がんのリスクが高くなる可能性があると言われています。
大腸がんの症状
大腸がんがあると便に血が混じったり(血便)、便が出づらくなって便秘気味になったりします。これらの症状がある方は一度検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧めします。
がんが大きくなり、腸が完全に詰まってしまうと腸閉塞になることもあります。
大腸がんの検査
健診などでの簡易な検査として便潜血検査があります。これは便の中の微量な血液を検出する検査です。がんからの出血はごくわずかであることがあり、日によって量に違いもあるため通常2日分の便を採取します。
便潜血検査が陽性になった方は必ず内視鏡検査(大腸カメラ)を受けましょう。内視鏡検査(大腸カメラ)では早期の小さいがんも発見することができ、がんの原因となるポリープをその場で切除することもできます。また、診断の確定のためには腫瘍から細胞を採取する必要があるため、直接病変にアプローチできる内視鏡検査(大腸カメラ)は必須の検査になります。
万が一腫瘍が見つかった場合はCTやPET-CTなどで体中を調べて転移の有無を検索し、病気がどこまで広がっているかをを確認します。この病気の広がりのことをステージ分類と呼び、ステージに応じて治療方針を検討します。
便潜血が陽性となった方や、ご心配な症状がある方は内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧め致します。
大腸がんの治療
大腸がんの治療は病気や体の状態に応じて手術もしくは抗がん剤、その組み合わせで行っていきます。
大腸の粘膜表面に留まる早期がんの段階で発見できた場合は内視鏡の先端から小さな電気メスを出してがんが出ている粘膜を剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)や、内視鏡から出したスネアでがんを切り取る内視鏡的粘膜切除術(EMR)など、内視鏡治療でお腹を切らずに治すことができる可能性があります。大腸の粘膜は粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜の5層の構造になっています。粘膜下層に水やヒアルロン酸などを注入して病変を浮かせ、電気メスで粘膜下層と固有筋層の間を剥離して病変を剥ぎ取っていきます。ただし、病変がある一定のラインより深くまで浸潤している場合、既に小さな癌細胞がより深くに広がっている可能性があるため、病変を取り除いても数年後に局所再発や転移をおこす可能性があります。そのため、いかに早期の段階でがんを見つけることごできるかが非常に重要になります。
がんが固有筋層より深くに浸潤している状態を進行癌と呼びます。進行癌の場合は病気の広がりや体の状態に応じて手術、抗がん剤治療、それらの組み合わせで治療を考えていきます。
当院は宝塚市立病院、関西労災病院、兵庫医科大学、阪大病院などと連携しておりますので、病気が見つかり次第すみやかに専門病院にご紹介致します。
大腸がんの予防
大腸がんの予防のためにはポリープをポリープのうちに切除することが大切です。小さいポリープであればその場で切除することも可能ですので、40歳以上の方でまだ内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことのない方は一度検査を受けてみられることをお勧め致します。
また、ポリープができやすい体質の方もおられますので、過去にポリープを切除したことがある方も定期的に検査を受けられることをお勧めします。
また普段の生活では禁煙・節度ある飲酒・運動ががん全般の予防に有効であることがわかっています、特に運動や食物繊維・カルシウムの摂取は大腸がんの予防に効果的です。
食道静脈瘤
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.19
食道静脈瘤とは
食道静脈瘤は肝硬変に合併する、食道の血管が膨張する病気です。食道・胃・腸などから出る細い静脈は1本の太い血管に集まっていき、肝臓に流入していきます。この肝臓に流入する太い血管を門脈と言います。肝硬変になると肝臓が硬くなり、門脈の血液が肝臓の中にスムーズに入って行きづらくなります。すると血液の流れが渋滞のような状態となり、食道や胃の静脈がパンパンに膨張してしまいます。これを静脈瘤と言います。血液の渋滞に血管が耐えきれなくなると静脈が破れ(静脈瘤破裂)、命に関わるほどの大出血を起こします。よく映画やドラマでお酒飲みの人が血を吐いているシーンがありますが、おそらく食道静脈瘤が破裂したものだと思われます。
食道静脈瘤の原因
食道静脈瘤は肝硬変に合併する病気ですので、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎、
脂肪肝やアルコールなどによる肝障害が原因となります。稀に肝臓が悪くなくても先天的な血管の異常で静脈瘤ができる方もおられます。
食道静脈瘤の症状
静脈瘤そのものは無症状ですが、破裂すると命に関わるほどの大出血を起こします。
破裂する前に発見し、治療する事が大切です。
食道静脈瘤の検査
内視鏡検査((胃カメラ)で実際に食道を見る事で診断します。
肝硬変の方は年に1回程度内視鏡検査(胃カメラ)を受ける事をお勧め致します。
食道静脈瘤の治療
破裂の兆候が見られた場合は予防的に内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)や内視鏡的静脈瘤硬化療法を行う場合があります。
た当院は宝塚市立病院・関西労災病院など近隣の中核病院と病診連携しておりますので、治療の必要のある方は速やかにご紹介いたします。
食道静脈瘤の予防
肝硬変を予防することが食道静脈瘤の予防になります。食べ過ぎ・飲み過ぎを避けること、健診で肝臓の異常を指摘されたら速やかに専門医を受診する事が大切です。
咽頭がん・喉頭がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.17
咽頭がん・喉頭がんとは
咽頭がん・喉頭がんは「のど」にできるがんです。鼻の奥から食道にかけての空気や食べ物が通る道を咽頭、咽頭から分かれて気管支や肺へ空気が流れる道を喉頭と言います。
咽頭がん・喉頭がんの原因
咽頭がんや喉頭がんの原因は飲酒やタバコの他、ヒトパピローマウイルスといウイルスの感染が原因となっているものもあります。
咽頭がん・喉頭がんの検査
正確な診断のためには耳鼻咽喉科で喉頭鏡検査を受ける必要がありますが、内視鏡検査(胃カメラ)をする際に可能な限り喉の観察もしますので、咽頭がん・喉頭がんをみつけることができる場合があります。ただし、えづきが強い場合は喉の観察ができないこともあります。
咽頭がん・喉頭がんの治療
病気や体の状態により手術・放射線治療・抗がん剤を組み合わせて治療を行います。早期に発見された咽頭がんは内視鏡治療が可能なこともあります。
当院では宝塚市立病院・関西労災病院・兵庫医大・阪大病院などと連携しており、治療が必要な病気が見つかった場合はこれらの病院に速やかにご紹介いたします。
咽頭がん・喉頭がんの予防
咽頭がん・喉頭がんを予防するためには禁煙し、飲酒も適量を心がけましょう。
胃がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.14
胃がんとは
胃がんは胃の内側の粘膜に発生する癌がんで、日本や韓国で多い病気です。
胃がんはかつて日本人の癌死亡率の第一位でしたが、近年死亡率は低下傾向にあります。一方で胃がんの罹患数は高齢化の影響で非常に増えています。
つまり、かつては亡くなる方も多い病気でしたが、検査や治療の進歩により、早期発見・早期治療を行えば完治が期待できる病気となりつつあります。
胃の壁は顕微鏡でみると粘膜上皮・粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜というそれぞれの層に分かれています。通常、胃がんは粘膜から発生し、大きくなっていくにつれて粘膜下層・筋層・漿膜と深い層へと浸潤していきます。漿膜より深くまでがんが浸潤すると、胃を突き破って近くにある肝臓や膵臓、横隔膜や大腸など他の臓器に広がっていきます。またお腹の中に癌の細胞が広がる腹膜播種が起こることもあります。
胃がんの原因
ピロリ菌という細菌に感染すると胃に炎症が起きたり、潰瘍ができたりすることがあります。胃の炎症が長期間続くと胃がんになる可能性が高くなると報告されています。
ピロリ菌は胃の粘膜に生息している細菌で、子供の頃に感染し、一度感染すると多くの場合除菌しない限り胃の中に住み続けます。
胃がんの症状
胃がんは早期の段階では自覚症状はほとんどありません。進行すると胃の痛み、不快感、胸焼け、吐き気、食欲不振、体重減少などがおこりますが、進行しても症状がない場合もあります。
また、がんから持続的に出血があることもあるため、便の色が黒くなったり(黒色便)、貧血がある方も要注意です。
これらの症状がある方は健診を待たずに早めに内視鏡検査(胃カメラ)などの検査を受けられることをお勧め致します。
胃がんの検査
胃がんの検査には内視鏡検査(胃カメラ)・バリウムなどがあります。
以前は胃がん検診などでは、バリウム検査がまず行われ、異常があった場合に精密検査として内視鏡検査(胃カメラ)を行うことが一般的でした。バリウム検査はX線を透さないバリウムという液体を飲んだ後にレントゲンを撮る事で胃の形や表面を観察するものです。白黒の影絵を見ているようなものなので、凹凸のない平坦な病変や小さい病変は見つけることができません。一方で内視鏡検査(胃カメラ)は先端につけた小型カメラで直接胃の中を観察するため、粘膜のわずかな隆起や陥凹、色調の違いも認識することができますり
診断の確定のためには内視鏡(胃カメラ)を行った上で組織生検をする必要があります。また、がんは早期診断・早期治療が大切になりますが、早期の小さい病変は内視鏡(胃カメラ)でしかみつけることはできません。
がんは早期発見・早期治療が非常に大切ですが、早期の胃がんでは病変がわずかな隆起や陥凹、色調や模様の違いとしてしか認識できないことがほ多いため、内視鏡検査(胃カメラ)の方が圧倒的に精度の高い検査ができます。さらに内視鏡ではがんが疑われたらその場で組織検査(病変の細胞を採取する検査)を行い、診断を確定することができます。
このような状況を踏まえ、国立がん研究センターの検診研究部では2015年から胃がん検診に内視鏡検査(胃カメラ)を推奨しています。
胃がんの治療
胃がんの治療は病気や体の状態に応じて手術や抗がん剤、もしくはその組み合わせを行っていきます。治療前に血液検査やCT、PET-CTなどで病気の広がりや体の状態を把握し、最適な治療法を検討していきます。
早期に発見でき、病変が粘膜の表層に留まっている場合は内視鏡治療ができる可能性もあります。内視鏡(胃カメラ)の先端から小さな電気メスを出し、胃の粘膜の表面の癌のある領域のみを剥離していく内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という治療法でお腹を切らずに治療することができます。
当院では宝塚市立病院・関西労災病院・兵庫医大・阪大病院などと連携しておりますので、治療が必要な病気を発見した場合は速やかに高次医療機関にご紹介致します。
胃がんの予防
胃がんの原因であるピロリ菌を除菌すると胃がんの発症リスクが大幅に低下することが知られています。薬を1週間内服するだけで90%以上の方がピロリ菌を除菌できます。通常、治療の2ヶ月後以降にピロリ菌の除菌が成功しているかどうかの確認の検査を行います。
また、ピロリ菌の除菌治療を行っても胃がんになる可能性が完全に0になるわけではないため、定期的な内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。除菌後しばらくは年に1回程度、内視鏡検査(胃カメラ)をしておいた方がよいでしょう。
内視鏡検査(胃カメラ)について
当院ではご希望に応じて経鼻(鼻から)と経口(口から)のどちらでも検査を受けて頂けます。口から検査される場合も細いカメラを使用しますので、楽に検査を受けられます。また、麻酔(鎮静剤)を使用して寝ている間に検査をしたり、大腸カメラと同じ日に一度に検査を済ますことも可能です。8:45〜18:30まで検査をしていますので、お仕事前やお仕事帰りに検査を受けて頂く事もできます。詳細は内視鏡検査のページをご確認ください。