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ピロリ菌
カテゴリー:内視鏡| 2024.06.18
1.ピロリ菌について
胃がんの原因の90%は、ピロリ菌感染が原因であることはご存知でしょうか?
ピロリ菌とは、胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌で、「ヘリコバクター・ピロリ菌」といいます。胃には強い酸(胃酸)があって、通常の細菌は生息できませんが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を使って、胃酸を中和しアルカリ性の環境にして胃の中で生存しています。
一般的に、胃の免疫力がまだ強くない幼少期に感染することが多く、家庭内で親から子へ感染することも多いといわれています。日本では約3500万人の方がピロリ菌に感染しているといわれており、特に50歳以上で多いです。
ピロリ菌は1982年にオーストラリアの研究者であるBarry MarshallとRobin Warrenが単離・培養に初めて成功しました。ピロリ菌が胃潰瘍の原因となることを証明するために、培養したピロリ菌を自ら飲み込み10日後に胃潰瘍となった逸話は有名ですが、彼らはこのときの功績で2005年にノーベル賞を受賞しています。
2.ピロリ菌に感染すると…
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜が萎縮し、過形成性ポリープというポリープができやすくなります。その他、胃内に粘液がたくさん付着したり、粘膜に鳥肌状の小さな隆起が無数にできる鳥肌胃炎という状態になることもあります。
ピロリ菌に感染しているだけでは、症状などは出ませんが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎の患者さんはピロリ菌に感染している方が多く、ピロリ菌が胃や十二指腸の炎症やがんの発生に関わっていることがわかっています。
日本人のデータでは、ピロリ菌に感染している人では男性は6人に1人、女性は13人に1人が胃がんになるという報告があります。
胃がんのリスクを下げるためには、ピロリ菌の有無を確認し、感染しているのであれば
積極的に除菌治療をすることが必要です。
3.ピロリ菌の検査方法
当院では、迅速ウレアーゼ試験、抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査、便中ピロリ抗原検査にてピロリ菌を調べることができます。
胃炎のある場合に保険適応となりますので、まずは内視鏡検査(胃カメラ)で胃炎の有無を調べる必要があります。
- 迅速ウレアーゼ試験
内視鏡検査(胃カメラ)時に胃粘膜を採取します。胃の組織を使ってピロリ菌が作り出すアンモニアによる反応の有無を試薬で調べます。
胃薬(PPI:プロトンポンプインヒビター)を内服していると正確な結果が出ないため、検査前に休薬が必要になります。
- 抗ヘリコバクターピロリ菌抗体検査
血液を採取して抗体を調べる検査です。ピロリ菌に感染していると、体内では細菌やウイルスと戦うために抗体を作り出すため、ピロリ菌抗体が増えます。
ただし、除菌治療に成功しピロリ菌がいなくなったあとも血中に抗体はしばらく残るため、現在感染しているのか、過去に感染していたのかの区別がつきづらいです。そのため、除菌後の結果確認にはあまり向きません。
- 便中ピロリ抗原検査
便の中にピロリ菌の抗原の有無を確認する検査です。抗原の有無は、現感染を証明する指標となります。
こちらも胃薬(PPI:プロトンポンプインヒビター)を内服していると正確な結果が出ないため、検査前に休薬が必要になります。
4.ピロリ菌は除菌できます
除菌治療を行えば、胃がんのリスクを1/3程度に下げることができます。ピロリ菌の除菌治療には、胃酸の分泌を抑えるお薬と2種類の抗生物質の3つのお薬が用いられます。この3種類のお薬を1週間服用することで、約9割の方は除菌に成功します。残念ながら除菌が成功しなかった1割の方は改めて他の種類のお薬を内服して頂くことになります。
ピロリ抗体が陽性でそのままにしている方、ピロリ菌感染の有無を調べたい方、一度も内視鏡検査(胃カメラ)を受けられた事がない方などお気軽にご相談ください。
大腸カメラ前の食事について
カテゴリー:内視鏡| 2024.06.07
大腸内視鏡検査を受けるにあたって、前日に何を食べてよいかお困りになったり、「これは食べていいのかな?」と不安になったことはございませんか?
大腸内視鏡検査は、検査前の準備として腸の中をからっぽにして検査をする必要があります。腸の中がきれいになっていないと検査に時間がかかるだけでなく、正確な診断ができなかったり、時には検査を受けられない場合もあります。
検査を受けられる患者さまには事前に下剤を内服していただいていますが、お薬だけで腸の中は十分にきれいになりませんので、検査前日のお食事の内容にも配慮していただく必要があります。ここでは、検査前日のお食事のポイントについてご紹介いたします。
1.検査前日
消化のよいものをよく噛んでお召し上がりください。例えば、ごはんやおにぎりは海苔や具のないものを、お魚は皮を除いたものがおすすめです。お味噌汁やうどんも具のないもので、パンもジャムはつけないほうがよいでしょう。
避けていただきたいものとして特にあげられるのが葉野菜やキノコ類、豆類、海藻などです。脂っぽいものや食物繊維が多いものは、消化されず腸に残りやすいのでお控えください。
果物はバナナや皮をむいたりんごは大丈夫ですが、小さい種のあるイチゴやキウイはお控えください。
お腹がすいたときの間食は、夕食の時間までにお済ませください。クッキーやプリン、実などが入っていないシンプルなゼリーがおすすめです。
夕食は20時までに済ませるようにしてください。
2.検査当日
食事は検査が終わるまで摂取できません。
水分はお通じがよく出るように、お水・お茶を十分にお取りください。
砂糖やミルクを含むジュースやコーヒー、紅茶はお控えください。
消化によい食事の準備が難しい方や不安のある方に、当院では、温めるだけでお召し上がりいただける朝食・昼食・間食・夕食がセットになった大腸検査食もご用意しております。お気軽にスタッフにご相談ください。
健診をはじめました。
カテゴリー:内科全般| 2024.05.27
1.健康診断について
皆様、季節の変わり目ですがいかがお過ごしでしょうか。
この時期どのようにご自身の健康チェックをされていますか?会社では定期的に健康診断を受ける機会がありますが、退職された方や子育てでお忙しい方などは、なかなかそういった機会も少ないかと思います。
どうしても日々の健康にだけ目を向けがちですが、長い目で見て健康を保っていくには健康診断などの予防医療がとても大切です。定期的に健康診断を受けることで、病気を早期に発見し、早い段階での治療につなげることができます。
また、毎年健康診断を受けることで去年の状態と今年の状態を比べ、健康状態が改善しているのかということも判断できます。生活習慣を見直し健康改善につなげることにも健康診断を活用することができます。
2.当院でも健康診断を受けることができます
当院では、宝塚市の特定健康診査・後期高齢者健康診査のほかにも、肺がん・大腸がん・前立腺がん・胃がんリスク検診、肝炎ウイルス検査を実施しており、胃がんリスク検診については内視鏡での精密検査も行っています。また、一般健診や人間ドックも行っています。尿検査や胸部レントゲンなどの簡易的な内容のものから各種血液検査や心電図までカバーしたものまでございます。またご希望に応じて胃カメラや肝臓専門医による腹部エコー検査もオプションで行うことができます。
3.この機会にぜひ健康診断を受けましょう
最後に健康診断を受けたのはいつですか?せっかく健康診断を受けても結果を放置したままにしていませんか?
さまざまな検査を通して、気づかない身体の異常を早期発見して頂くために当院をぜひご利用ください。
大腸ポリープ
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.24
大腸ポリープとは
ポリープというのは粘膜から突出する小さな隆起性の病変の総称です。大腸にできるポリープには腺腫、過形成性ポリープ、若年性ポリープなど様々な種類があります。
腺腫や一部の過形成性のポリープは大きくなると悪性化する可能性があり、大腸がんの原因となります。
大腸ポリープの原因
大腸ポリープは高脂肪・低繊維質のな食生活に偏っている方や、飲酒や喫煙の習慣がある方にできやすい傾向にあります。いわゆる「食生活の欧米化」により大腸ポリープや大腸がんが増加していると考えられています。また遺伝的な要因でポリープができやすい体質の方もおられます。
大腸ポリープの症状
大腸ポリープは小さなうちは症状が出ないことが一般的です。ポリープが大きくなってくると便に血が混じる(血便)ことがあります。
大腸ポリープの検査
内視鏡検査(大腸カメラ)で大腸の中を詳しく調べることにより、ポリープを見つける事ができます。大腸内視鏡(大腸カメラ)は肛門から内視鏡を挿入して大腸の内部を直接観察します。NBI(Narrow Band Imaging: 狭帯光観察)という特殊な光を用いたり、インジゴカルミンという青い色素を散布することでポリープ表面粘膜の性状や血管の構造を詳細に観察し、腺腫・がん・その他のポリープの区別をつけていきます。
大腸ポリープの治療
内視鏡検査(大腸カメラ)でポリープが見つかれば、小さなものであればその場で切除する事もできます。
ポリープの切除の方法は大きくわけて3個あります。
- コールドポリペクトミー
ポリープの根本にスネアと呼ばれる金属のリングを引っ掛けて切り取る方法です。
- EMR(内視鏡的粘膜切除術)
ポリープの下の粘膜下組織に水を注入してポリープを持ち上げた後、スネアに通電して焼き切る方法です。
- ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
ポリープの下の粘膜下組織に水や薬液を注入してポリープを持ち上げたあと、内視鏡の先端から出した小さな電気メスで少しずつ剥離していく方法です。
当院ではコールドポリペクトミーを行っております。10年ほど前までは、ほとんどのポリープに対してEMRが行われてきましたが、通電を行わない方が出血・穿孔などの合併症が少ないというデータが出ており、近年は小さなポリープに対してはコールドポリペクトミーが主流となっています。
ただし、1cmを越えるような大きなポリープや、癌が疑われるようなポリープではコールドポリペクトミーでは病変が取りきれなかったり、太い血管から出血を起こす可能性があるためEMRを行う事が推奨されています。スネアに入りきらないような大きなポリープはESDを行いフリーハンドで切除していく必要があります。
切除したポリープは病理検査に出し、がんが混じっていないかなどを確認します。確実に診断を行うために、ポリープを一括で切除することが非常に重要です。内視鏡医はポリープの大きさや部位に応じて、確実に一括で取り切れる治療法を選択していきます。
大きなポリープがある場合や数が多い場合など、安全に切除するためにそ入院設備のある病院で切除した方がよい場合は提携病院(宝塚市立病院・関西労災病院・宝塚病院など)をご紹介させて頂きます。
ポリープ治療の合併症
内視鏡治療の合併症としては出血や穿孔(腸に穴があくこと)などが起こりえます。当院で行なっているコールドポリペクトミーは、2017年に報告されたsystematic reviewで800例以上の治療に対して治療後出血・遅発性穿孔はともに0例だったとの解析が出ており、比較的安全に治療を行うことができると考えられています。
ポリープ治療の費用
ポリープ切除は「手術」扱いになります。ポリープの個数にもよりますが、1割負担の方で1万円、3割負担の方で3万円ほどの費用になります。
民間の医療保険に加入されている方は手術給付金がおりることがあります。詳細はご加入の保険会社にお問い合わせください。
大腸がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.20
大腸がんとは
大腸は1.5〜2mほどの管状の臓器で主に水分の吸収を行っています。盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸にわかれ、盲腸と上行結腸の間にあるバウヒン弁という弁で小腸と、直腸から肛門へと繋がっています。
大腸にできるがんを大腸がんと言い、2019年のデータでは男女ともに2番目に多いがんでした。
大腸がんは早期に発見し、早期に治療すれば完治が期待できる病気です。また、原因となるポリープを小さいうちに切除すれば大腸がんの発症を予防することができます。
一方で、大腸がんは粘膜の表面から発生しますが発見が遅れると次第に粘膜の奥深くまで広がっていき、やがて大腸の壁の外まで広がっていきます。大腸の壁との深くに流れるリンパ管や血管にがん細胞が到達すると、リンパ液や血液の流れにのってリンパ節転移や肝臓や肺などの臓器に遠隔転移をおこしてしまうこともあります。
大腸がんの原因
大腸ポリープ(大腸腺腫)が癌化して大腸がんになると考えられており、これをAdenoma-Carcinoma sequenceと呼びます。
大腸がんの30%は遺伝的素因があると言われており、大腸ポリープ・大腸ながんになりやすい体質の方がおられます。近親に大腸ポリープ・大腸がんになられた方がおられる場合は注意が必要です。
また、生活習慣や食生活などの環境的な要因も大腸がんの発症と関与していると言われています。喫煙・飲酒・肥満や加工肉・赤肉の過剰な摂取により大腸がんのリスクが高くなる可能性があると言われています。
大腸がんの症状
大腸がんがあると便に血が混じったり(血便)、便が出づらくなって便秘気味になったりします。これらの症状がある方は一度検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧めします。
がんが大きくなり、腸が完全に詰まってしまうと腸閉塞になることもあります。
大腸がんの検査
健診などでの簡易な検査として便潜血検査があります。これは便の中の微量な血液を検出する検査です。がんからの出血はごくわずかであることがあり、日によって量に違いもあるため通常2日分の便を採取します。
便潜血検査が陽性になった方は必ず内視鏡検査(大腸カメラ)を受けましょう。内視鏡検査(大腸カメラ)では早期の小さいがんも発見することができ、がんの原因となるポリープをその場で切除することもできます。また、診断の確定のためには腫瘍から細胞を採取する必要があるため、直接病変にアプローチできる内視鏡検査(大腸カメラ)は必須の検査になります。
万が一腫瘍が見つかった場合はCTやPET-CTなどで体中を調べて転移の有無を検索し、病気がどこまで広がっているかをを確認します。この病気の広がりのことをステージ分類と呼び、ステージに応じて治療方針を検討します。
便潜血が陽性となった方や、ご心配な症状がある方は内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧め致します。
大腸がんの治療
大腸がんの治療は病気や体の状態に応じて手術もしくは抗がん剤、その組み合わせで行っていきます。
大腸の粘膜表面に留まる早期がんの段階で発見できた場合は内視鏡の先端から小さな電気メスを出してがんが出ている粘膜を剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)や、内視鏡から出したスネアでがんを切り取る内視鏡的粘膜切除術(EMR)など、内視鏡治療でお腹を切らずに治すことができる可能性があります。大腸の粘膜は粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜の5層の構造になっています。粘膜下層に水やヒアルロン酸などを注入して病変を浮かせ、電気メスで粘膜下層と固有筋層の間を剥離して病変を剥ぎ取っていきます。ただし、病変がある一定のラインより深くまで浸潤している場合、既に小さな癌細胞がより深くに広がっている可能性があるため、病変を取り除いても数年後に局所再発や転移をおこす可能性があります。そのため、いかに早期の段階でがんを見つけることごできるかが非常に重要になります。
がんが固有筋層より深くに浸潤している状態を進行癌と呼びます。進行癌の場合は病気の広がりや体の状態に応じて手術、抗がん剤治療、それらの組み合わせで治療を考えていきます。
当院は宝塚市立病院、関西労災病院、兵庫医科大学、阪大病院などと連携しておりますので、病気が見つかり次第すみやかに専門病院にご紹介致します。
大腸がんの予防
大腸がんの予防のためにはポリープをポリープのうちに切除することが大切です。小さいポリープであればその場で切除することも可能ですので、40歳以上の方でまだ内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことのない方は一度検査を受けてみられることをお勧め致します。
また、ポリープができやすい体質の方もおられますので、過去にポリープを切除したことがある方も定期的に検査を受けられることをお勧めします。
また普段の生活では禁煙・節度ある飲酒・運動ががん全般の予防に有効であることがわかっています、特に運動や食物繊維・カルシウムの摂取は大腸がんの予防に効果的です。