バックナンバー
胃がん検診(胃カメラ)について
カテゴリー:内科全般| 2025.07.03
胃がんは日本で4番目に志望者数の多いがんですが、定期的に検査を受けることによって予防や完治が可能な病気です。胃がんはピロリ菌という菌が原因となっていることが多く、ピロリ菌の除菌治療を行うことでその発生率を大きく下げることができることが知られています。また、胃がんになってしまった場合でも早期に発見できた場合は内視鏡治療で完治することができますので、手術でお腹を切らなくても治すことができます。このように定期的に検査を受けてピロリ菌の治療や胃がんの発見を早めに行うことが極めて重要です。
宝塚市では2024年まで血液検査による「胃がんリスク健診」というものが行われていましたが、2025年より廃止されてしましました。また、内視鏡(胃カメラ)による胃がん検診を行っている自治体もありますが、宝塚市では実施されておりません。
胃がんは早期の段階で発見できた場合は内視鏡治療でお腹を切らずに治すことができます。
当院では独自に検診の胃カメラ(内視鏡ドック)を行っております。
・検診・ドックとは?
まず普通の内視鏡検査(胃カメラ)と検診・ドックによる内視鏡検査(胃カメラ)の違いをご説明します。検査の内容は一緒なのですが、費用負担が変わってきます。一般的な診療では健康保険が適応され、自己負担は1~3割となります。一方で検診・ドックは保険が適応されないため全額自己負担により検査を行うことになります。お腹に病気がある可能性がある場合は保険の適応になりますので、過去に胃の病気をされたことがある方(胃がん・胃潰瘍・胃炎・ピロリ菌感染など)や、これまでになにかお腹の症状を自覚したことのある方(腹痛・胃もたれ・吐き気・詰まる感じがする・胃の調子が悪いなど)は保険適応で検査ができる可能性がありますので、医師にご相談ください。
また、内視鏡検査(胃カメラ)では胃の中の組織を採取して精密検査に提出する必要がある場合があります(病理検査)。検診・ドックで胃カメラを受けられた方も病理検査にかかる費用は健康保険が適応されます。
・胃がん検診は内視鏡検査(胃カメラ)が有効!
2024年まで宝塚市では血液検査による「胃がんリスク健診」というものが行われていました。これは血液検査によるものですが、胃がんの原因となるピロリ菌が胃の中にいる可能性を調べるもので、直接的にピロリ菌感染や胃がんの有無を調べるものではありませんでした。そのため「胃がんによる死亡率を下げる」という意味では有効性がはっきりせず、2024年で廃止となってしまいました。
一方で、冒頭にご説明したとおり胃がんは日本では非常に多い病気で、死亡者数は癌の中で4番目に多い病気です。胃がんリスク検診に代わる検診を市の方で実施してほしいところですが、現在そのような動きはありません。そこで当院では独自に胃カメラ(内視鏡)による検診・ドックをおこなっております。
一般的に胃がん検診にはバリウムによるものと胃カメラ(内視鏡)によるものがありますが、内視鏡検査(胃カメラ)による検診の優位性を示す報告が多数出ています。
・延べ40,620例の胃がん検診での検査法別の胃がん発見率の比率では、内視鏡検査0.28%、バリウム検査では0.04%で内視鏡検査の方が優位に胃がん発見率が高かった1)。
・胃がん検診を受けていない群は受けた群と比較して胃がん死亡率が約3倍高かった。検診を受けた群のなかでバリウム検診と内視鏡検診を比較したところ、内視鏡検査受診者の胃がん死亡はバリウム受診者に比べて優位に少なく、検診後5年以内の胃がん死亡率は約1/4だった2)。
このように胃がん検診を受けることで胃がんによる死亡率を下げることができ、またバリウム検査よりも内視鏡検査(胃カメラ)検査の方がその効果が高いことがわかっています。
特に早期の胃がんにおいいては、病変はわずかな隆起や凹み、色調の違いとしてしか認識できないため、内視鏡検査(胃カメラ)の方がこうした病変の指摘には断然優れています。また、内視鏡検査(胃カメラ)では食道がんも同様にして診断することができますが、バリウムでは食道の中はすぐに流れ去ってしまうため詳細な観察は困難です。
さらに内視鏡検査(胃カメラ)ではがんが疑われたらその病変の組織を一部採取(生検)して病理診断(顕微鏡診断)によってそのままがんかどうかの確定診断をつけることができます。バリウムではこうしたことはできないため、けっきょく後日改めて内視鏡検査(胃カメラ)も受けて確定診断を付ける必要があり、二度手間のかかる効率の悪い検査となります。それなら初めから内視鏡検査(胃カメラ)を受ければ良いのではないかと思われる方も多いのではないのでしょうか?
また、バリウム検査ではバリウムの誤嚥による肺炎や、腸にバリウムが詰まることによる腸閉塞が起こることもあり、特にご高齢の方では注意が必要です。
一方の内視鏡検査(胃カメラ)には「しんどい」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、当院ではなるべく苦痛が少なく検査を受けて頂けるように細いカメラを使用し、鼻からの検査も可能です。また、ご希望の方には追加費用無しで麻酔(鎮静剤)を使用しております。
このように胃がん検診を受けることにより胃がんによる死亡率を低下させることが知られていますが、現在宝塚市では胃がん検診は行われておりません。また、バリウムよりも内視鏡検査(胃カメラ)の方が早期がんの発見率が高く、検査精度が高いというデータが出ています。
これらの状況を踏まえ、胃がんで亡くなる方を0にすることを目指して当院では独自に内視鏡ドック(胃カメラ検診)を行っております。詳しい内容や費用などはこちらをご覧ください。採血やレントゲンなどの含まれる一般検診や、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)と同じ日に組み合わせて検査を行うこともできます。ご予約は予約フォームの「内視鏡ドック」(一般検診も同時にご希望される場合は「定期検診・一般検診」)のタブや、お電話でも受け付けておりますので、是非いちどご検討ください。
- 斉藤英夫ら 上部消化管検診における内視鏡検査の有用性に関する検討 健康医学 14(1):5~8, 1999
- Hosokawa O et al. Decreased death from gastric cancer by endoscopic screening: association with a population-based cancer registry. Scand J Gastroenterol 2008;43:1112-5.