クリニックブログ

このような症状が出たら – 食欲の異常

カテゴリー:内科全般| 2025.09.10

体の調子が悪い時に食欲がなくなる、ということを誰しも経験したことがあるかと思いますが、食欲は食べ物に対する生理的な欲求であり、体の健康状態と密接に関係しています。

食欲を支配する因子としては、血液中の血糖値・遊離脂肪酸・インスリンや、モチリン・グレリン・レプチンなどの消化管ホルモンが知られています。また、脳の中でも大脳皮質や視床下部という領域が食欲に関係していると言われています。

 

食欲異常の種類

食欲の異常というと、食欲が無くなる「食欲不振」が有名ですが、他にも様々な異常が現れることがあります。

・食欲不振

食べ物に対して食欲がわかなくなる、もしくは無くなる状態

・大食症

食欲が異常に亢進した状態。糖尿病などでみられることがある。

・異食症

氷や土など通常は食べないものを好んでたべること。一部の貧血などおこることがある。

 

食欲不振の原因

食欲は上に記載しているとおり、さまざまな因子が関与しているため、食欲がなくなる原因も幅広い範囲の病気が考えられます。主に、内臓によるものと内臓以外によるものに分けて考えられる原因を挙げていきます。

・内臓によるもの

がん

食道・胃・大腸などにがんができると蠕動運動や消化が悪くなり、食欲がわかなくなることがあります。また、腫瘍が大きくなった場合は食道・胃・大腸が物理的に狭くなり、食べ物が通過しづらくなったりすることがあります。診断は内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)で行います。

消化管(胃腸)以外のがん、たとえば膵臓がんや胆嚢がん、肺がん、婦人科系のがんでも病状が進行すると食欲がなくなることがあります。これを悪液質と言います。

逆流性食道炎

胃と食道のつなぎ目が緩くなり、胃から食道へ胃酸が逆流する病気です。胸焼けなどの症状が出ることが多いですが、後述する機能性でディスペプシアを合併していることも多く、食欲が出なくなることもあります。

食道カンジダ症

食道にカンジダという真菌(かびの一種)が生えることがあります。多くの場合は無症状ですが、ひどくなると食欲不振や胸のつかえ感などの症状が出ることがあります。内視鏡検査(胃カメラ)で診断し、症状がある場合は抗真菌薬で治療します。

胃炎

胃炎がひどくなると食思不振や胃痛などの症状を起こすことがあります。胃炎にもピロリ菌や薬剤によるものなど、様々な原因があります。こちらにまとめておりますので興味がある方はご参照ください。

胃潰瘍

胃潰瘍ができると胃痛などの症状が出ることが多いですが、普段から痛み止めを定期内服されている方や、糖尿病の方などは胃痛を感じず、食欲不振として症状が出ることがあります。内視鏡検査(胃カメラ)で診断し、胃酸を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬で治療を行います。

幽門狭窄症

胃潰瘍や十二指腸潰瘍が治ったあとに粘膜がひきつれて胃や十二指腸が変形し、食べ物が通りづらくなることがあります。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは胃の機能による問題です。潰瘍やがんなどがないにも関わらず、慢性的に胃もたれ・膨満感・みぞおちの痛み・満腹感などの症状が続き、食欲がなくなります。モチリン・グレリンなどの食欲に関与するホルモンの異常や、ピロリ菌の感染、胃の知覚過敏、ストレスや心理的な要因などが原因として挙げられますが、これらが複合的に組み合わさっていることも多くみられます。治療薬として胃の動きをよくするような薬があります。

慢性便秘症

便秘が続くとお腹が張り、食欲にも影響が出ることがあります。便秘は腸の狭窄や閉塞によっておこる「器質的便秘」と腸の蠕動運動の低下・異常による「機能性便秘」にわけられます。器質的便秘には大腸がんなど重大な結果をもたらす病気が含まれているので、「たかが便秘」と軽く考えず、一度は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をされることをお勧めします。

腸閉塞

腸閉塞は「イレウス」とよばれ、小腸もしくは大腸が完全に閉塞し、食べ物や便が通過できなくなる病気です。お腹の手術を行うと術後何年か経ってから小腸に癒着が起こり、腸閉塞の原因となることがあります。また、大腸癌などの癌が大きくなると腸閉塞を来すこともあります。癒着が原因の場合は入院して数日間絶食・点滴をすることで自然に解除されることもありますが、自然に解除されない場合・血管もまきこまれていて腸の血流が悪くなり壊死(腐ること)をした場合・癌が原因の場合などは手術が必要となります。

食中毒

食中毒などが原因で胃炎や腸炎が起こると、胃腸の動きが悪くなり食欲が低下します。

・内臓以外によるもの

感染症

かぜやインフルエンザなどにかかったときに食欲が出ないということはよく経験されると思います。

細菌・ウイルス感染を起こした際の全身症状のひとつとして食欲不振が出ることがあります。

慢性腎不全・肝不全・心不全

腎臓や肝臓、心臓などが悪くなると、体全体がだるくなり、食欲も減退することがあります。

ストレス・神経症

ストレスや疲れなど精神的な問題が原因で食欲がなくなることがあります。

 

このように様々な原因による食欲が低下することがあります。中には胃がんや大腸がんなど重大な結果をもたらす病気が原因になることもありますので、食欲の低下が長期間続く場合は一度病院を受診することをお勧めします。