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このような症状が出たら―吐き気・嘔吐

カテゴリー:内科全般| 2025.06.04

吐き気・嘔吐は飲酒や胃腸炎など、さまざまな原因で起こります。こちらでは吐き気や嘔吐が起こるメカニズムや、その原因となる病気についてご説明致します。なかには恐い病気が隠れていることもありますので、吐き気や嘔吐が続く場合は一度病院を受診されることをお勧めします。

 

・嘔吐の起こる仕組み

脳の延髄というところに嘔吐中枢という領域がありますが、この嘔吐中枢が刺激されると嘔吐が起こります。嘔吐が起こるには

  • 嘔吐中枢が直接刺激される場合
  • 内臓から迷走神経という神経を経由して刺激される場合
  • 耳の中にある器官(内耳・前庭)から刺激が伝えられる場合
  • 化学物質による刺激が起こる場合
  • 精神的な反応として嘔吐する場合
  • 消化管の狭窄・通過障害

などがあります。従って胃腸炎など胃や腸の病気だけではなく、全身的な要素を考慮する必要があります。ここではそれぞれどのような病気が考えられるかをご説明していきます。

 

・吐き気・嘔吐の原因として考えられる病気

  • 嘔吐中枢の直接刺激

脳腫瘍や脳出血、髄膜炎などにより頭蓋骨の中の圧力が高まると嘔吐中枢が直接刺激

され嘔吐が起こります。この場合、吐き気は伴わないことが特徴的です。頭をぶつけた少し後(血腫が大きくなるまで数時間~数ヶ月後のこともあります)に突然嘔吐し始めたり、意識障害や麻痺・激しい頭痛などの症状を伴う場合は頭のCTや髄液検査などを行う必要があります。一刻を争うこともありますので、頭の病気が疑われる場合はためらうことなく救急車を呼んで頂く必要があります。

  • 内臓からの迷走神経を経由した刺激

迷走神経とは脳の延髄から出ている神経で体の中で多数枝分かれし、胸部や腹部の中の各臓器にも広く分布しています。下記の様々な病気により臓器に異常が生じると、この迷走神経を介して刺激が脳に伝わり、吐き気・嘔吐を生じることがあります。

・胃腸炎や胃・十二指腸潰瘍、虫垂炎、胃がんなどの消化管の病気

・急性肝炎・急性膵炎・胆石・胆嚢炎などの肝・胆・膵の病気

・心不全・心筋梗塞・狭心症などの心臓の病気

・尿路結石・腹膜炎など

  • 耳の中にある器官(内耳・前庭)から伝わる刺激

耳の奥には内耳・前庭器官と呼ばれる平衡感覚や体の傾きを感知し、脳に伝える器官があります。この器官の異常により刺激が嘔吐中枢に伝えられると吐き気や嘔吐を生じ、乗り物酔いやメニエール病などにみられます。

  • 化学物質による刺激

脳の脳幹という部分に化学受容体誘発帯(chemoreceptor trigger zone, CTZ)と呼ばれる領域があり、血液中の薬物や毒物に反応して嘔吐中枢に刺激を送ります。ニコチンなどの薬物や食中毒による毒素が血液中に貯まると嘔吐を生じます。アルコールを飲み過ぎたといきに吐いてしまうのも同じ理由です。

また、腎臓が悪くなったり、低酸素状態が続いたりすると体にとって毒になる化学物質が血液中に増加していきますので、それらもCTZへの刺激を介して嘔吐を引き起こすことがあります。

  • 精神的な反応としての嘔吐

神経性、心因性の要因が嘔吐の原因となることもあります。これに属するものとしてはストレスや恐怖、ショック、抑うつ、PTSDなどによるものがあります。

  • 消化管の狭窄、通過障害による嘔吐

消化管(胃腸)に狭くなっている部位があり、物理的に通過が障害されると嘔吐が起こります。胃がんや大腸がんにより狭窄が生じたり、潰瘍によって狭窄が形成されたりします。

 

このように吐き気や嘔吐は様々な病気が原因で起こります。胃腸炎などの感染症が原因であれば次第に治まることが多いですが、吐き気や嘔吐が続く場合は胃がん大腸がんなどの重大な病気が隠れている場合もありますので、いちど内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を行い詳しく調べてみることをお勧め致します。