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感染性腸炎

カテゴリー:内科全般| 2024.07.21

感染性腸炎とは、腸に細菌やウイルスが感染することにより下痢・腹痛・発熱などの症状がでる病気です。

腸炎の原因となる代表的な微生物としては以下のものが挙げられます。

細菌性:サルモネラ 腸炎ビブリオ カンピロバクター 黄色ブドウ球菌 腸管出血性大腸菌(O-157) 赤痢菌 コレラ菌 エルシニア菌など

ウイルス性:ノロウイルス ロタウイルス エンテロウイルス アデノウイルス サイトメガロウイルスなど

寄生虫・原虫性:赤痢アメーバ ランブル鞭毛虫など

 

症状や治療法は原因となる微生物によって異なります。

 

サルモネラ腸炎

夏に多発します。肉や卵などが原因になることが多いです。

急激な発熱や頻回の下痢、腹痛、嘔吐などの症状が出ます。下痢は水のような便でときに緑色の便が出ることもあります。若い方ほど症状が激しい傾向があります。

生焼けの肉などが原因となりますので、夏場は特に肉はよく焼いて食べましょう。

 

腸炎ビブリオ

こちらも夏におこりやすい病気です。海水中で繁殖し、純水では死滅します。お刺身が原因になったり、汚染したまな板による二次感染がおこることもあります。

症状は発熱、激しい下痢、みぞおち付近の痛みがでますが2~3日程度で回復することが多いです。下痢は水のよう便でときに血が混じることもあります。

 

カンピロバクター

カンピロバクターは家畜の腸の中に生息しており、胃腸炎や食中毒の原因として有名です。

生もしくは加熱不十分な鶏肉を介して感染することが多く、鶏肉はよく焼いて食べる必要があります。また、糞便などからも接触感染し、ペットや他の人から直接感染することもあります。

感染すると腸のなかで菌が増殖し、下痢・血便などの症状が出ます。腸の中で増殖するのに時間がかかるため潜伏期は2~5日と長めです。発熱や下痢、腹痛などの症状が出ますが、血便が出ることも多いです。

症状が重い場合は抗生剤を用いて治療を行います。

 

黄色ブドウ球菌

人の皮膚や傷口にいることが多い菌で、菌そのものは無害ですが毒素を産生して食中毒を起こすことがあります。調理する人の手に傷口がある場合、化膿を起こして黄色ブドウ球菌が増殖し、食品汚染に繋がることがあります。手袋をすることで予防が可能です。また、冷蔵保存により毒素の産生が予防されます。

症状は吐き気・嘔吐が中心で、腹痛や下痢がみられることもありますが、通常熱は出ません。毒素による症状であるため抗生物質は効果がありません。

 

腸管出血性大腸菌(O-157)

過去に集団感染を起こし、社会問題になったこともある菌です。ベロ毒素という毒素を産生し、大腸に炎症をおこします。まず下痢が起こり、その後血便や腹痛が起こります。

生、もしくは加熱不十分な牛肉、未殺菌乳、野菜、リンゴジュース、ヨーグルトなど様々な食材が感染源となり得ます。

この菌は熱に弱く加熱で死滅しますが、低温には強く冷蔵庫でも生存します。

激しい腹痛を伴う下痢で始まり、1~2日で激しい血便となります。20%くらいの方に熱が出ることもあります。腸炎発症後2~14日御に腎不全や脳症を合併することがあり、死亡例もあります。感染を予防するため食品を扱う際は手洗い・消毒などを行う必要があります。

菌や毒素の排出を遅らせてしまうため、下痢止めは使用できません。

 

赤痢菌

ヒトを自然宿主とし、糞便などに存在した菌で汚染された飲食物を介して感染します。

症状は発熱・腹痛・粘血便などがあります。予防のためには食材を扱う際にはきちんと手洗いをすることが重要です。

 

コレラ菌

下痢および脱水が主症状になります。東南アジアなどへの旅行で感染することがあります。感染しても過半数は無症状かマイルドな症状ですが、感染者の一部は「米のとぎ汁様」と呼ばれる激しい下痢が出現し。重度の脱水症状を起こします。

 

ノロウイルス

秋から春にかけて好発し、感染者の吐物や排泄物からウイルスが排出されヒト-ヒト感染が起こります。アルコールによる消毒は効果がないため、感染予防のために石けんによる手洗い・塩素系漂白剤による消毒が重要です。

自然界では貝類にウイルスが蓄積されやすいため、生牡蠣などを食べると感染することがあります。熱には弱いウイルスですのでしっかり火を通すと安心です。

 

 

夏は食中毒の起こりやすい時期です。また、今年は学校や職場などで胃腸炎の流行もみられます。食材を触る前や食事の前には手洗いをする、肉にはしっかり火を通す、保存するときは冷蔵庫で保存するなど、対策を行うことで予防できる病気もたくさんあります。