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大腸がん
カテゴリー:内視鏡| 2024.05.20
大腸がんとは
大腸は1.5〜2mほどの管状の臓器で主に水分の吸収を行っています。盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸にわかれ、盲腸と上行結腸の間にあるバウヒン弁という弁で小腸と、直腸から肛門へと繋がっています。
大腸にできるがんを大腸がんと言い、2019年のデータでは男女ともに2番目に多いがんでした。
大腸がんは早期に発見し、早期に治療すれば完治が期待できる病気です。また、原因となるポリープを小さいうちに切除すれば大腸がんの発症を予防することができます。
一方で、大腸がんは粘膜の表面から発生しますが発見が遅れると次第に粘膜の奥深くまで広がっていき、やがて大腸の壁の外まで広がっていきます。大腸の壁との深くに流れるリンパ管や血管にがん細胞が到達すると、リンパ液や血液の流れにのってリンパ節転移や肝臓や肺などの臓器に遠隔転移をおこしてしまうこともあります。
大腸がんの原因
大腸ポリープ(大腸腺腫)が癌化して大腸がんになると考えられており、これをAdenoma-Carcinoma sequenceと呼びます。
大腸がんの30%は遺伝的素因があると言われており、大腸ポリープ・大腸ながんになりやすい体質の方がおられます。近親に大腸ポリープ・大腸がんになられた方がおられる場合は注意が必要です。
また、生活習慣や食生活などの環境的な要因も大腸がんの発症と関与していると言われています。喫煙・飲酒・肥満や加工肉・赤肉の過剰な摂取により大腸がんのリスクが高くなる可能性があると言われています。
大腸がんの症状
大腸がんがあると便に血が混じったり(血便)、便が出づらくなって便秘気味になったりします。これらの症状がある方は一度検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧めします。
がんが大きくなり、腸が完全に詰まってしまうと腸閉塞になることもあります。
大腸がんの検査
健診などでの簡易な検査として便潜血検査があります。これは便の中の微量な血液を検出する検査です。がんからの出血はごくわずかであることがあり、日によって量に違いもあるため通常2日分の便を採取します。
便潜血検査が陽性になった方は必ず内視鏡検査(大腸カメラ)を受けましょう。内視鏡検査(大腸カメラ)では早期の小さいがんも発見することができ、がんの原因となるポリープをその場で切除することもできます。また、診断の確定のためには腫瘍から細胞を採取する必要があるため、直接病変にアプローチできる内視鏡検査(大腸カメラ)は必須の検査になります。
万が一腫瘍が見つかった場合はCTやPET-CTなどで体中を調べて転移の有無を検索し、病気がどこまで広がっているかをを確認します。この病気の広がりのことをステージ分類と呼び、ステージに応じて治療方針を検討します。
便潜血が陽性となった方や、ご心配な症状がある方は内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧め致します。
大腸がんの治療
大腸がんの治療は病気や体の状態に応じて手術もしくは抗がん剤、その組み合わせで行っていきます。
大腸の粘膜表面に留まる早期がんの段階で発見できた場合は内視鏡の先端から小さな電気メスを出してがんが出ている粘膜を剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)や、内視鏡から出したスネアでがんを切り取る内視鏡的粘膜切除術(EMR)など、内視鏡治療でお腹を切らずに治すことができる可能性があります。大腸の粘膜は粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜の5層の構造になっています。粘膜下層に水やヒアルロン酸などを注入して病変を浮かせ、電気メスで粘膜下層と固有筋層の間を剥離して病変を剥ぎ取っていきます。ただし、病変がある一定のラインより深くまで浸潤している場合、既に小さな癌細胞がより深くに広がっている可能性があるため、病変を取り除いても数年後に局所再発や転移をおこす可能性があります。そのため、いかに早期の段階でがんを見つけることごできるかが非常に重要になります。
がんが固有筋層より深くに浸潤している状態を進行癌と呼びます。進行癌の場合は病気の広がりや体の状態に応じて手術、抗がん剤治療、それらの組み合わせで治療を考えていきます。
当院は宝塚市立病院、関西労災病院、兵庫医科大学、阪大病院などと連携しておりますので、病気が見つかり次第すみやかに専門病院にご紹介致します。
大腸がんの予防
大腸がんの予防のためにはポリープをポリープのうちに切除することが大切です。小さいポリープであればその場で切除することも可能ですので、40歳以上の方でまだ内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことのない方は一度検査を受けてみられることをお勧め致します。
また、ポリープができやすい体質の方もおられますので、過去にポリープを切除したことがある方も定期的に検査を受けられることをお勧めします。
また普段の生活では禁煙・節度ある飲酒・運動ががん全般の予防に有効であることがわかっています、特に運動や食物繊維・カルシウムの摂取は大腸がんの予防に効果的です。