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胃炎について
カテゴリー:内視鏡| 2024.10.26
ひとことに胃炎と言っても様々な種類の胃炎があります。
普通の胃薬では改善が見込めず特別な治療を行わないといけないものや、逆に症状がなければ治療が必要ないものなど、その原因によって対応も様々です。
胃炎の症状
胃に炎症が起こるとみぞおち付近に痛みが出ることが多いです。また、胃の動きが悪くなることにより胃もたれが出たり、食欲がなくなったりすることもあります。出血を伴うようなひどい胃炎が起こっている場合は便が黒くなります(黒色便・タール便)。
胃炎の種類
びらん性胃炎
数mm~数cm大の発赤が散在します。発赤の中央は陥凹し、小さな白苔を伴ったり微量に出血したりすることがあります。多発することが多いですが、単発で不整形のものは胃癌との鑑別が必要です。
疣状胃炎
慢性胃炎の一種で、胃の前庭部(出口の近く)にいぼのようなびらんが多発します。歩チープ状・混紡状・数珠状などの形をとることもあり、単発のこともあります。胃がんに類似することもあり、見た目だけではがんとの区別が難しいことがあります。特にサイズが大きく、形状が不整なものは注意が必要です。
胃アミロイドーシス
胃の粘膜の下にアミロイドという物質が沈着することにより胃の表面に顆粒状の隆起やびらんがみられます。関節リウマチなどに合併することが多いです。
鳥肌胃炎
胃の出口周辺(前庭部)~中央付近(胃角部)にかけて広くみられます。3mm大の小結節状~顆粒状の隆起が均一に密集し、胃の表面が鳥肌のようにみえます。隆起の中心には陥凹した白色の斑点がみられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因であることが多く、ピロリ菌の除菌治療が必要です。
萎縮性胃炎
こちらもピロリ菌感染が原因による胃炎です。胃の粘膜が薄くなり、粘膜の奥の血管が透けて見えます。胃のひだが萎縮したり、消失したりもします。ピロリ菌に長期間感染していると胃がんの原因となることが知られています。また、除菌治療を行うのが早ければ早いほど胃がんのリスクも低下しますので、早めに診断・治療を行う必要があります。
薬剤性胃炎
薬の副作用により胃炎を生じることがあります。
特にロキソニンなどの解熱鎮痛薬や、アスピリンなどの血液をサラサラにする薬は胃炎を生じさせやすいことがよく知られています。
これらの薬を飲むときは胃を保護するために胃薬を一緒に飲むことをお勧めすることもあります。
門脈圧亢進性胃症
肝硬変に合併する胃炎です。炎症の所見に乏しく、血流がうっ滞することにより胃の粘膜にむくみ・発赤・出血がおこります。粘膜のむくみにより胃の表面が蛇のうろこのように見えるsnakeskin apperanceや多発する点状の出血など特徴的な所見がみられます。根本的な原因は肝臓にあるため、血液検査や腹部エコーで肝臓の機能を検査し、肝臓の治療を行っていく必要があります。
好酸球性胃炎
アレルギーが原因の胃炎で腹痛を繰り返します。吸収障害により栄養不良となり、体がむくみやすくなったりすることもあります。胃だけでなく、食道や大腸にも病変が出現することがあります。重症の場合はステロイドによる治療が必要となります。
DAVE・GAVE
正式名称をびまん性前庭部毛細血管拡張症という長い名前の胃炎です。前庭部(胃の出口付近)に毛細血管の拡張が多発し、出血がみられます。出血がひどくなると便が黒くなったり(タール便)、貧血によるふらつきが出たりすることがあります。出血が持続する場合は内視鏡を用いて止血を行う必要があります。
胃梅毒
浅く、形状が不整なびらんが多発します。顆粒状の変化もあります。粘膜は鈍い光沢のある暗い赤色となり、出血しやすくなります。胃の壁が固く、内腔が狭くなることもあります。梅毒の治療を行う必要があります。
胃アニサキス症
アニサキスはサバやイカに寄生している寄生虫でこれらを生で食べることで感染することがあります。アニサキスに対するアレルギー反応で、これらを食べたあとに急激にみぞおちが痛くなります。
内視鏡検査(胃カメラ)を行うとアニサキスの虫体をみつけることができ、その場で鉗子を用いて摘出します。虫体を摘出するとお腹の痛みはすみやかに改善します。
アニサキスは冷凍すると死滅するので、対策としてはサバやイカを生で食べるときは一度冷凍すること、よく噛んで食べることなどが挙げられます。
上記のように一言で胃炎と言っても色々な胃炎があります。病気によって原因・治療はそれぞれですので、しっかりと診察を行い、内視鏡検査(胃カメラ)で特徴的な所見がないか丁寧に観察し、必要に応じて生検(病理検査)などを行いながら胃炎の診断・治療を行っています。
また、胃炎の中にはがんとの区別が難しいものもあります。まぎらわしい病変を見つけた際は、胃内に色素を散布したり、内視鏡のNBI(狭帯域光観察)という特殊な光をあてるモードを使用したりしながら丁寧に観察し、必要に応じて細胞を採取し良性か悪性かをしっかりと診断していきます。
胃炎の中には症状が出にくいものもありますが、腹痛・胃もたれ・黒色便などの症状が出るものもあります。また、ピロリ菌に感染していた場合、長期間感染が持続していると胃がんの原因になるためピロリ菌の治療を行う必要があります。ピロリ菌は飲み薬を1週間飲むだけで治療が可能です。早く治療すれば早く治療するほど胃がんになるリスクは下がりますので、心配な症状がある方は一度内視鏡検査(胃カメラ)を受けられることをお勧めします。