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逆流性食道炎

カテゴリー:内視鏡| 2024.08.09

逆流性食道炎とは

胃酸などの胃内容物が食道内に逆流する病気の総称を胃食道逆流症(GERD)と言い、そのうち食道の粘膜に炎症が出ているものを逆流性食道炎と言います。逆流性食道炎は成人の10〜20%の方がかかっていると言われています。

また、逆流性食道炎と同様に胃酸の逆流によって起こる病気にバレット食道というものがあります。これは本来は酸に弱い食道の粘膜が、日常的に胃酸の逆流に暴露されることよって、酸に強い胃の粘膜のように変化していってしまった状態です。内視鏡(胃カメラ)で観察すると胃の粘膜が食道の方まで伸びてきているように見えます。バレット食道自体は治療の必要性のあるものではありませんが、重度のものになると食道がんの発生母地となることが知られています。

 

逆流性食道炎の原因

食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)には食道括約筋という筋肉があり、胃の内容物が食道内に逆流しないように胃の入口を締め付けています。この食道括約筋が緩むことで、胃と食道のつなぎめの締まりが弱くなり、胃の一部が横隔膜より上に脱出してしまう状態を食道裂孔ヘルニアと言います。食道裂孔ヘルニアがある方は胃酸が食道内に上がってきやすく、逆流性食道炎も合併しやすいです。

また食道や胃の蠕動運動が低下する事で食道内に胃酸が逆流・滞留し、炎症が起こりやすくなります。健康な人でも胃酸の逆流が起こる事はありますが、時間が短いためあまり問題になることはありません。

手術で胃を摘出した方でも逆流性食道炎が起こることがあり、胃酸だけではなく胆汁などの逆流も原因のひとつになっているのではないかと言われています。

 

逆流性食道炎の症状

典型的な症状としては胸焼け(酸っぱい液が上がってくる・胸〜お腹に焼けつくような不快感がある)がありますが、炎症のおこる部位により症状は様々です。

食道と下の方のみに炎症が起こっている方はお腹の痛みとして症状を自覚される場合もあります。また、喉の方まで酸が上がってくることもあり、慢性的な喉の痛みや咳の原因となっている事もあります。

一方で食道裂孔ヘルニアがあったり、食道の粘膜が荒れていたりしてもそれほど胸焼けなどの自覚症状がない方もおられます。食道内の知覚神経の過敏性が症状の自覚しやすさと関係しているという報告があります。

 

逆流性食道炎になりやすいヒトの特徴

・食べ過ぎ・早食い

食べ過ぎで胃に内容物が貯留しすぎると、食道内に逆流しやすくなります。また、早食いの方はよく噛まずに飲み込むので食べ物と共に多量の空気も飲み込んでしまいます。すると同様に胃内が膨張し、内容物が逆流しやすくなります。

・高脂肪食

脂肪を摂取するとコレシストキニンというホルモンがほ分泌され、胃と食道のつなぎ目が緩み、胃酸が逆流しやすくなります。

・食べてすぐに横になる

食後は最も胃酸が多い時間帯です。寝る直前に食事をすると夜間に胃液が食道に上がってきて、朝起きた時に胸焼け症状が出やすくなります。

 

逆流性食道炎の検査

内視鏡検査(胃カメラ)により、逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアの有無を確認することができます。

大学病院などでは食道の蠕動運動や内圧の検査を行っている施設もあります。

 

逆流性食道炎の治療

お薬による治療が中心になります。

胃酸を抑える薬、食道や胃の動きをよくする薬などを病気やゆ体の状態に合わせて組み合わせて使っていきます。

胃酸を抑える薬はH2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター(PPI)、ボノプラザン(PCAB)など様々な薬がありますので、お一人お一人の症状に応じて薬の種類や内服のタイミングを調整していきます。

重度の逆流性食道炎は手術で症状が改善することもあります。当院は宝塚病院など逆流性食道炎の手術経験豊富な病院と病診連携をしておりますので、必要に応じてご紹介させて頂きます。

 

逆流性食道炎の予防

肥満があると胃酸の逆流が起こりやすいので、体重のコントロールが逆流性食道炎の予防になります。

アルコールやタンパク質の多い食事、脂質の多い食事、コーヒーなども胃酸の分泌を促進すると言われています。胸焼けが気になる方は空腹時にはコーヒーは控えた方がよいかもしれません。

また、夜間の症状が強い場合は、就寝前の食事を避ける・寝る時に背中に布団を一枚かませて上体を少し起こして就寝するなどの方法で症状が改善する事もあります。