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潰瘍性大腸炎
カテゴリー:内視鏡| 2024.06.28
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは大腸の粘膜に慢性的に炎症がおこる病気です。大腸の炎症が持続することにより長期間にわたり下痢が続き、腹痛や発熱・血便が伴う事もあります。日本では難病のひとつに指定されています。10万人に100人程度が発症すると言われていますが、近年増加傾向にあります。発症に男女差はなく、10代・20代の若い方から70代・80代のご高齢の方まで幅広い年代で発症こ可能性があります。
炎症が起こっている期間が何年間にも及ぶと腸へのダメージが蓄積し、大腸がんが発生しやすくなることも知られています。欧米の報告ですが、大腸がんの発生率は診断からの経過年数が10年で1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%と年数が経過するほど高くなる傾向がみられました。大腸がんの発生がないかを確認するため、定期的に内視鏡検査](大腸カメラ)で確認(サーベイランス)することが推奨されています。
また原発性硬化性胆管炎など他の病気に合併することもあります。
潰瘍性大腸炎の症状
大腸に慢性的に炎症がおこる事により、便の水分を吸収する機能が低下します。その結果、下痢が持続的におこり、頻回にトイレに行かないといけなくなります。それだけでも日常生活に大きな支障が出ますが、炎症がひどくなると熱が出たりお腹が痛くなったりする事もあります。また腸にびらんや潰瘍などが形成されると出血がおこり、血便が出ることもあります。
これらの症状の現れ方は人によってさまざまなであり、軽度の症状が長期間持続する方、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す方、急激に重度の症状が出現する方など様々な方がおられます。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の原因は現在のところはっきりとはわかっていません。
同じ家系内に発症者がいるケースも多く、なんらかの遺伝的要因があることが考えられますが、原因となる遺伝子はまだ同定されていません。
また、食生活の乱れやそれに伴う腸内環境の悪化、ストレス、免疫細胞の異常などさまざまな要因ぎ重なり合って発症すると考えられています。
潰瘍性大腸炎の検査
潰瘍性大腸炎の診断を行うには大腸の内部を詳しく調べることができる内視鏡検査(大腸カメラ)が必須です。内視鏡検査(大腸カメラ)にて大腸の粘膜の血管と透見性の低下、発赤、浮腫、膿請求書付着物、びらん、潰瘍などを認めると潰瘍性大腸炎を疑い、生検により粘膜の一部を直接採取することにより診断を確定します。内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことにより、大腸がんの有無も一緒に調べることができます。
また、潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症やそれに伴う出血を生じさせます。炎症の程度や出血による貧血の有無を調べるために血液検査を行います。重症例は中毒性巨大結腸症という緊急性のある病態となっていることもあるため、レントゲンやCTを併用して腸の状態こともあります。
潰瘍性大腸炎との治療
潰瘍性大腸炎と診断された場合は重症度に応じて次のような治療を行います。
まず潰瘍性大腸炎の治療の主体となるのは薬物療法です。
軽症の患者さんに対しては大腸に生じた炎症を鎮める5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)製剤を中心に用います。何種類かの薬があり、剤型も内服薬や坐薬などがあるので炎症の範囲や部位によって使い分けています。
中等度〜高度の炎症があるときはステロイド・免疫抑制剤・生物学的製剤・一種の人工透析などの免疫の異常を抑える治療法から選択して、もしくはこれらを組み合わせて治療を行っていきます。生物学的製剤とはバイオテクノロジーを用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的として作用する薬です。効果は良好であることが多いものの、長期間使用し続けているとだんだん効きづらくなってくる(二次無効)という課題がありました。ここ10年ほどで生物学的製剤もたくさんの薬剤が開発されており、ひとつの薬剤の効果が減弱したとしても他の薬剤にスイッチしやすくなっています。
多くの方はこれらの治療により症状は寛解しますが、中には一度よくなっても症状が再燃する方もおられます。
また、重症例で薬物療法でのコントロールが難しい場合や、大腸がんの発生がみられた時は手術(大腸亜全摘術師)が必要となることもあります。
当院は潰瘍性大腸炎の最先端の研究や治療を行っている大阪大学や兵庫医大と連携を行っており、必要があれば速やかにこれらの施設にご紹介致します。
潰瘍性大腸炎の予防
潰瘍性大腸炎は発症メカニズムがよくわかっていないため、有効な予防策も確立されていません。
ただし、腸内環境の悪化が発症に関与していることが示唆されているため、規則正しい食生活を行い、なるべくストレスを溜めないようにしましょう。
心配な症状がある方は一度内視鏡検査(大腸内視鏡)を受けてみられることをお勧め致します。